コラムcolumn

2025年10月15日

自治体の会計管理者とは?

 自治体の会計管理者はどのような存在なのでしょうか?会計管理者という言葉から会計を管理する人だということは想像がつくと思います。
 会計管理者とは、自治体の会計事務を統括する⼈物です。地⽅⾃治法第168条に基づき、全国の都道府県と市町村に必ず1⼈置かれる必置の役職です。東京都のような大きな団体から職員数が少ない団体も必ず1人は会計管理者を長は職員の中から任命する必要があります。
 この会計管理者の名称の歴史は浅いです。従前は収入役(都道府県では出納長)と呼ばれ、長が議会の同意を得て選任し、任期が4年の特別職の公務員でした。よく、長・助役(現行は副市長)・収入役は3役と言われ、組織を代表する立場の3つの主要な役職でした。この収入役は、2007年3月31日限りで廃止されました。
 収入役の廃止の主な要因は、出納事務の電算化が進み正確な会計処理が可能となったことにより、特別職の収入役の配置が必要なくなったからだと感じています。私が習志野市で収入役の廃止になる時期に会計課に3年ほど在籍していました。その当時は、会計課の隣に収入役室がありました。基本的な会計事務は会計課長が行っており、特に重要な案件のみを収入役に決裁をもらう状況でした。収入役は議会開催中に議会に出席し、人事異動や市の行政運営など市長からとよく相談を受けていました。
 収入役から会計管理者に制度が変更になっても、名称が変更となっただけで、地方自治法の規定の変更はありませんでした。

ここで、特徴的な条文を紹介したいと思います。

地方自治法第169条(親族の就職禁止)
①普通地方公共団体の長、副知事若しくは副市町村長又は監査委員と親子、夫婦又は兄弟姉妹にある者は、会計管理者となることができない。
②会計管理者は、前項に規定する関係が生じたときは、その職を失う。

 この規定は「性悪説」に基づいたもので、もし親族関係が許されれば、不正の隠蔽や不適切な支出が容易になり、住民の不信を招くことになるからだと考えられます。私が会計管理者となった際に、このような親族の調査を人事当局で行ったのかは定かではありません。

地方自治法第243条の2の8(職員の賠償責任)
(要旨)会計管理者が故意または過失により保管に係る現金を亡失した場合、その損害について賠償責任を負います。

 習志野市の隣のF市の事例を紹介します。固定資産税などの市税徴収金2,000万円あまりを税務担当職員が個別訪問で徴収し、銀行の営業時間外だったため、会計課の金庫に保管し、翌日確認したところ、300万円が亡失したとのこと。原因はわからず、関係する税務担当職員の他、会計管理者も賠償責任を問われ、約40万円を賠償したとのこと。このようなことがあるので、私は会計管理者になった際、職員対象の賠償責任保険に加入しました。また、習志野市でも、税務担当課職員が時間外に徴収した市税などを翌日まで会計課金庫に預かることがあります。この場合、会計課職員に税務担当職員と一緒に現金の残額を確認するようよう指示しました。

 会計管理者は、財務会計制度において法令や予算への適合性に関する審査など、きわめて重要な役割を担っています。これは、違法な行為を防ぐだけではなく、公共の福祉のための財政健全性と住民の信頼を確保する上で重要なことです。
 しかしながら、会計管理者の位置づけが低いように感じます。なぜなら多くの自治体で会計管理者は会計課長などと兼務が多いこともその要因かと思います。現状では、職員数が限られた中ではやむを得ないのかもしれません。私自身、会計管理者と会計課長を兼務したこともあり、併せて、公会計の業務を行なったこともあります。忙しくも充実した時期だったのかと思います。

システムディ顧問 宮澤 正泰(元習志野市会計管理者)