コラムcolumn
2025年05月19日
公会計業務の所管は?

公会計業務の所管はどの部署が担当となるのがよいでしょうか?
習志野市の場合は、様々な所管部署で公会計業務を行ってきました。このような経験をもとに、検証していきたいと思います。
現在は、公会計改革の業務を「財政部門」が担っている自治体が多いと思います。財政部門は、主に予算編成と普通会計決算(総務省の定める基準=決算統計としてまとめられている。)を担当しています。このことから、財政部門が担うことは自然の成り行きだと思います。
しかしながら、財政部門は非常に忙しいところです。そういう忙しい部署に新しい公会計業務が課せられたため、統一的な基準ができるまでは、簡便な方法として容認されていた決算統計を利用できる総務省方式改訂モデルが選択されるのは当然の結果でした。
習志野市でも、最初は財政部門である財政課が担当しましたが、事業別・施設別の分析や施設の再生計画をしっかり進めていきたいという思いから、大変ではあっても複式簿記を導入し、固定資産台帳を整備する「基準モデル」(➡統一的な基準ができるまでモデルの一つ。総務省方式改訂モデルよりも難易度が高い。)を選択しました。
企画部門が担当する自治体は少ないと思います。
習志野市では、財政部内にあった経営改革推進室を企画政策部に機構改革をしたことがあります。企画政策部は市の基本計画の策定や行政評価を担当し、市長が所属する秘書課でもあることから、市の施策上で公会計を位置づける場合には適していると思います。しかし、実際の作業をこなすには不向きな部署だと思います。
管財部門はどうでしょうか?
固定資産台帳との連携を考えれば、もっとも望ましいようにみえます。しかし、公会計の財務書類では有価証券などの金融資産の調査が必要となるほか、行政コスト計算書も作成する必要があるため、これらの作業には不向きだと思います。
習志野市では、令和6年度まで、会計課が公会計業務の所管となりました。
会計課は1件1件の伝票を審査して、現在の現金主義会計の決算の調製や財産に関する調書を取りまとめているところです。現在の会計も新公会計制度の会計も、基礎的データはほとんど一緒です。将来、日々の仕訳をすることを想定するならば、公会計の所管は会計部門がベストではないかと考えて、機構改革を実施しました。
日々仕訳を行っている東京都などでも、会計部門が所管となっています。習志野市では、会計部門に機構改革を実施するにあたり、財政部・総務部・企画政策部の3つの部で3年間も検討を重ねました。
習志野市の令和7年度第1回定例会(2025年2月27日)でいちづみ雄幸議員より、「地方公会計に関する業務が財政課に移管されることについて」の一般質問がありました。令和7年度から公会計業務が会計課から財政課に移管することについての質問です。
この質問に対する市長答弁を紹介します。
いちづみ議員は「これまで習志野市は公会計の取り組みは先進市でありましたが、最近は進捗が図られていない状況です。財政課へ業務が移管されることで、決算や予算に公会計が活用されることを期待したいです。」と述べています。
私が退職した後は、公会計業務の先進市というより、ちゃんと財務書類等の作成をすることが手一杯のように見受けられました。幸いにも現在の財政課には私が在職中に一緒に施設マイナンバーや日々仕訳導入に尽力した後輩職員がいます。ぜひ期待していきたいと思います。
システム ディ顧問 宮澤 正泰(元習志野市会計管理者)