コラムcolumn

2025年07月22日

固定資産台帳の整理・精緻化について

 今後の地方公会計のあり方に関する研究会報告書(令和6年12月)が総務省から公表されました。この報告書の中から、私自身が重要と考えている固定資産台帳の整理・精緻化について検討してみたいと思います。
 まず、固定資産台帳とはどのような位置づけでしょうか?統一的な基準では、「財務書類の作成に必要な情報を備えた補助簿」と位置づけられており、その活用方法として「公共施設等の維持管理・修繕・更新等に係る中長期的な経費の見込みを算出することや、公共施設等の総合的かつ計画的な管理に関する基本的な方針等を充実・精緻化することに活用することも考えられる」とされています。
 現状では「補助簿」として固定資産台帳が整備すべき情報の範囲が明確ではない、いわゆる公共施設マネジメント等の活用への道筋も見えづらい、といった指摘がありました。
 統一的な基準は、資産として固定資産台帳に記載する単位の区分である「記載単位」について、「現物との照合が可能な単位であること」及び「取替や更新を行う単位であること」という2つの原則を示しています。
 この2つの原則は非常に重要なものかと思います。固定資産台帳に記載されている資産、例えば「ピアノ」が今、どこの施設にあるのかということです。この「ピアノ」の存在が不明ということでは、資産のマネジメントなんかでないということです。また、同じ型式の「ピアノ」が2台ある場合なども「ピアノ2台」として固定資産台帳に記載されている場合なども現物との照合が可能とは言えないと思います。この場合は「ピアノA」「ピアノB」としないと処分や修理がどのピアノか特定できないからです。もう一つの原則は、例えば「建物」などの場合、耐用年数ごとに分けるということです。建物本体と建物の附属設備は耐用年数が違うことから別々に固定資産台帳に記載することにより、取替や更新のときの処理ができることになります。
 では、この原則をどのくらいの団体が守っているのでしょうか?総務省の作成状況等調査によると固定資産台帳において記載単位の2つの原則を満たしている団体は、令和5年度末で全団体の54.9%にあたる981 団体となっており、いまだ半数近い団体が記載単位の原則を満たしていない状況にあるとのことです。
 この原因の一つとして考えられるのは、統一的な基準において、固定資産台帳の整備開始時に「過去に取得したものを分けて管理していない場合は、一体として固定資産台帳に記載することを許容」したことがあります。具体的には、建物本体と附属設備の耐用年数が異なるような場合であっても、一体と見なして本体の耐用年数を適用して減価償却計算を行うことができるということです。これは、固定資産台帳をとにかく整備したいという総務省の意思があったと感じました。開始時に容認した簡便な処理は例外であり、統一的な基準のマニュアルには「開始時簿価の算定のための減価償却計算は、建物本体と附属設備の耐用年数が異なるような物件であっても、一体と見なして建物本体の耐用年数を適用して減価償却計算を行うことができることとします。ただし、開始後に取得するものについては、原則に従い建物本体と附属設備を分けて固定資産台帳に記載することとします。なお、開始時に建物本体と附属設備を一体として固定資産台帳に記載したものであっても、更新など一定のタイミングで分けて記載し、精緻化を図ることが望まれます。」との記載があります。
 しかしながら、一旦、開始時に建物本体と附属設備を一体として固定資産台帳に記載されたものを更新など一定のタイミングで分けて記載することをほとんどの自治体で行ってこなかったということかと思います。
 固定資産台帳が公会計情報の重要なデータを提供し施設のマネジメントに活用されるにはまずはこの2つの原則によることが重要かと考えます。
 その上で、固定資産台帳の施設等単位データの連携が必要と考えます。具体的には、固定資産台帳にはA施設に関するものは2つの原則により個別に記載されていますので、施設等コード(習志野市では施設マイナンバーと呼称しました。)により連携し、A施設の施設カルテを作成することが有効です。この施設カルテには固定資産台帳のデータのほかに非財務情報である利用者数や耐震診断の結果など組み合わせて分析することにより、より効率的・効果的に公共施設マネジメントが実施できると思われます。

システムディ顧問 宮澤 正泰(元習志野市会計管理者)