コラムcolumn

2026年09月16日

庁内分権型予算について

 庁内分権型予算は、予算の編成権限を、財政担当課だけで抱え込まず、部局ごとに分けて持たせる仕組みです。
 従来の予算編成では、各部局が要求した金額を、財政課などが1件ごとに査定し、全体を調整していく方法です。これに対して庁内分権型予算では、まず「この部局にはこのくらいの枠を配る」という形で予算枠を示し、その枠の中で何にいくら使うかを、各部局自身に考えさせる点に特徴があります。
 このような庁内分権化予算を取り組んだ習志野市の例を紹介します。

平成15年12月9日定例会(市長答弁抜粋)
 市民に直結する各部局が自立的に予算編成を進める庁内分権型予算を、平成16年度予算編成より導入することといたしました。
 日常的に市民に接し、そのニーズを直接感じている各部局が、新たな改革、新たな挑戦を念頭に自立的、主体的に予算を編成する庁内分権型予算を導入したことで、より市民に密着した予算編成が可能となり、ひいては協働型社会の実現に近づくものと考えております。

 習志野市では試行錯誤を続けながら庁内分権型予算を導入しています。令和8年度予算編成方針の一部を紹介します。

令和8年度予算編成方針(抜粋) 習志野市長
 令和8年度予算編成も、「経常的経費を庁内分権型予算による配当方式とし、臨時的・政策的経費は各部からの要求に基づく積み上げ方式」とする。 

 上記内容を整理すると、次のようになります。

観  点 内  容 意  図
対象経費 経常的経費を庁内分権型の配当方式で編成 日常的経費を部局の経営判断に委ねる
政策経費 臨時的・政策的経費は積み上げ方式 新規・大型事業は全庁で精査
位置づけ 経営改革の一環として導入 行政マネジメントの強化を意図

 庁内分権型予算について習志野市長の諮問機関である経営改革懇話会より次のようなことが課題であると指摘されました。

経営改革を実行するための検討報告書 平成21年4月
「庁内分権型予算の仕組みは導入されたが、行政マネジメントの歯車の一部とはなっていない。多くの職員がPDCAサイクルの意味、なぜ必要なのかを理解していない。」

 導入した分権型予算が十分に機能しているとは言い難いという指摘です。

 ここで、庁内分権型予算のメリットとデメリットを見てみましょう。
メリットとしては、事業を直接担う部局が予算枠を持つことで、地域の声や現場の状況を踏まえた取捨選択がしやすくなります。与えられた枠の中でどう成果を出すのかが求められますので、部局の主体性と責任が明確となります。また、財政担当部門が細かい査定に追われる負担を減らすことで、公共施設の更新などの全体マネジメントに集中しやすくなることが考えられます。
 一方、デメリットとしては、各部局が自分の枠を守ろうとするあまり、類似事業が複数部局で予算措置されてしまうこともあります。本来なら全庁的に優先すべき分野への集中投資が必要なのに、それが難しくなる懸念もあります。また、枠配分の中で削減を迫られた時に、各部局が十分な優先順位づけを行わず、全事業を少しずつ削る、例えば、消耗品費一律10%カットなどが想定されます。本来は、やめる事業と伸ばす事業をはっきり分けることが必要です。
 では、庁内分権型予算をどう評価するか?制度しては現場に近いところに裁量を与えるという意味では筋が通っているようですが、実際には部局が本気で優先順位づけをすることができるのか?全庁的な調整を担う部門が機能しているのか?住民や議会に対する説明の仕組みが整っているのか?といった条件が揃わないと期待された効果は出ないのかもしれません。
習志野市でも庁内分権型予算を導入していますが、対象経費が経常的経費だけであり、政策的経費や臨時的経費は従来型の一件査定望ましいとの判断をしています。
 庁内分権型予算は導入したら成果がでる魔法の制度ではなく、自治体の経営力を試す器なのだと言えるかもしれません。

システムディ顧問 宮澤 正泰(元習志野市会計管理者)