コラムcolumn

2024年03月22日

なぜ不適切な会計処理が行われるのか?

なぜ不適切な会計処理が行われてしまうのでしょうか?それはそういう状況があるからではないでしょうか?

例えば、現金が事務机の上に無造作に置いてある場合と、現金が金庫の中に保管されている場合を考えてください。事務机の上の現金は、つい出来心で盗むことも容易です。しかし、金庫の中の現金を盗むということは出来心というより計画的な犯罪ということになるでしょう。このことは、現金の保管の仕方によってリスクが高まるということです。
 
では、複式簿記会計と現金主義会計に違いはあるのでしょうか?ここで平成22年11月発行の公会計白書(東京都・大阪府)に掲載されている当時の橋下徹大阪府知事の言葉を紹介します。

今の官庁会計は、「単式簿記」、いわば大福帳方式で、
・ストクックである基金からの借入れにより、フローである毎年の収支尻を合わせるなど、資本取引と損益取引を区分しない
・2つの年度の取引が併存する出納整理期間の存在
・管理やリスクを踏まえない、杜撰(ずさん)なアセットマネジメント
など、仕組み自体が財務状況を正確に表すものになっていません。
「粉飾、赤字隠しを許しうる」欠陥があり、企業会計が常識の民間からは理解しづらい代物です。地域住民によるガバナンス、財務マネジメントには全く役立ちません。

ここから読み取れるのは、現行の官庁会計のシステム自体に問題があるとの指摘だと思います。また、明治政府が当初、複式簿記会計を導入した理由が現金の適正な管理だったといわれています。たしかに、明治維新以前は各藩が独自の通貨を使っていましたし、今まで戦をしていた相手方もいることから、完全に信用していなかったはずです。
 
いままでの不適切な会計処理の問題の背景には、職員のコンプライアンス意識の希薄と、長年の前例踏襲などが指摘されています。大事なのは、職員の意識改革が一番であることは疑いの余地はありません。そしてさらに、不正が起こりにくい複式簿記の導入や出納整理期間の見直しなどの環境整備も、将来的には必要でないかと思います。

システムディ顧問 宮澤 正泰(元習志野市会計管理者)