コラム

2018.04 新京都八景…比叡山麓 走る『HIEI』は 聖と俗との往復列車

HIEI 京都は盆地である。山々に囲まれている。京都府域全体では、恐らく数百の山があることだろう。洛中は東山・北山そして西山に囲まれているが、その東山三十六峰の北端にあってかつ最高峰の山が比叡山である。とは言っても、標高は1000mに満たない。県境などが無かった大昔、その山頂に平安京の国家鎮護を願って創建されたのが天台宗の総本山延暦寺。以来、延暦寺は名刹であり、比叡山は京都の名峰なのである。

 延暦寺は、大乗仏教全般を学ぶ聖地として、平安時代以来、法然上人、親鸞上人をはじめ禅宗の栄西禅師、道元禅師、さらに一遍上人や日蓮聖人など、各宗派の祖師達を輩出してきた日本仏教のルーツである。そしてまた山全体が、殺生禁断の地として、多くの野生動物や植物が保護され生息する、都のサンクチュアルな山である。
 今も千日行等の荒修行は行われたりしているが、にわかに比叡山全体が身近になって来た。宗教施設が観光施設として活用されることは今に始まったことでは無いが、比叡山ではガーデンミュージアムやリゾートホテルも山頂に開設されて、聖地と観光地とがお互いに刺激しかつ補完しあっているかのようだ。

 今年の春から走り出した叡山電鉄の『HIEI』は、俗と聖をつなぐ現代の渡し船である。あの世とこの世を往来する極楽列車と言えるかもしれない。延暦寺の燈明と比叡山の気のパワーを抽象化したスピリチュアルな『HIEI』は、出町柳と比叡山口を15分で結ぶ。終点の比叡山口からケーブルカーに乗って約5分、極楽浄土のようなガーデンミュージアムに辿り着く。
 山頂の静謐な空気に触れて伽藍を巡って罪を懺悔し、足湯に浸かって心をほぐせば、ストレスいっぱいの俗にまみれた心身がスッキリ解放されるということなのだろう。(M)

【2018年04月02日】

前のページへ戻る