コラムCOLUMN

2021/04/01

2021.04 京都二十四節気…清明の賀茂川堤で桜を楽しみ、府下の野菜畑で穀雨を味わう

桜と菜の花

 この1年は、第二次世界大戦以来最悪の1年であった。新型コロナウイルスが猛威を振るったということに起因するが、それ以上に人類が自粛以外何も対応する手立てを持っていなかったことである。この100年余り人類は科学技術の進化を追い求め、地球上は勿論、海底から宇宙まで投機の対象を拡げ、海流や大気の流れに影響を及ぼし、気候まで左右するようになった。
 その動きに加速度を付けたのが、世界のグローバル化である。良いことはなかなか波及しないが、凶事はたちまち全世界に広がる。経済や文化の力に頼るまでもなく、国際連帯でオリンピックや各種世界イベントを用意するまでもなく、むしろそれらを追い風に黄砂は飛散し、ウイルスは伝播していく。冬でも暖かく、夏でも雨が続く。異常気象が異常でなくなり、毎年50年に一度の自然災害は更新される。

 それでも季節は巡る。二十四節気は1年365日を約15日の期間で24に分け、その折々を季節で表す。元々古代中国から伝えられたもので、太陽暦に基づく季節の変化を簡潔なキーワードで表現されている。特に、顕著な季節の変化に敏感に反応し、農業が盛んだった日本では重宝されてきた。かつての中国には自然に親しむ心の余裕があったのだ。

チューリップ

 4月は、5日が『清明』20日が『穀雨』と称されている。春分を過ぎて澄んだ空気のもとで陽光が眩しく輝き、草木が芽吹き花が咲き、鳥や虫が飛び交う…はずである。実際、春は巡ってきている。異様な暑さで3月中旬には桜が咲き、柳が芽吹いた2021年の春ではあるが、それでも公園や街頭は勿論、市内の神社仏閣や公園の至る所で桜関連のイベントや特別展が催される。
 感染拡大防止のための緊急事態宣言が解除され、何故か他の地域より時間制限が緩和されて飲食店等の営業時間短縮がなくなった京都には当然多くの観光客が来るだろうし、その後の新型コロナ、変異コロナの猛威も懸念される。それでも桜は咲き誇り、おそらく多くの寺社ではそれなりの制限を設けているだろうが、飛び交うウイルスは防ぎようがない。
 残念ながら、今年は『清明』とはいかず『自衛』の春である。

キャベツ畑

 穀雨は、いわゆる“菜種梅雨”のことではない。この頃に穀物の種を捲くと、雨が降って穀物がよく育つという言い伝えであり、願望でもある。実際この後に続くGWは、行楽日和を期待するも無情によく雨が降る。市中ではもうほとんど田畑はないが、市の中心部から周辺部、さらに府下にかけて京野菜の栽培と直販が盛んになりつつある。昔と違って年中種蒔きと収穫が繰り返される。春の収穫と夏野菜の植え替え時期でもあり、上賀茂、岩倉から亀岡、京丹後等の栽培地では、名残りの冬野菜と早生(わせ)の夏野菜が道の駅や直売所で入手できる。

 新型コロナも巨大地震も50年に一度の風水害も、桜を楽しみ大地の恵みを味わう『清明』や『穀雨』と同じ大きな自然の営みの一つとして捉える心の余裕をもって立ち向かっていきたい。(M)

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