コラムcolumn
2026年06月22日
出納整理期間とは?

自治体の「会計期間」は4月から翌年の3月までです。これは、予算で定められた「会計年度」であるともいえます。この「会計期間」と「会計年度」の用語の違いは、会計年度が予算で認められた金額の支払期間であるという意味を強調している点です。
自治体の会計が現金主義を採用しているというのなら、この支払期間である年度末までに収支の原因が発生したものすべてをその年度の収支として整理し、現金での支払いを終了する必要がありますが、そんなことはできないでしょう。自治体では、救済措置として出納整理期間という独自の考え方を採用しています。
なぜ、救済措置が必要なのでしょうか?具体的な事例で説明したいと思います。例えば、令和8年度(令和8年4月1日~令和9年3月31日)の予算で事務机を購入することが議会で認められたとします。そこで令和9年3月31日に納品を確認して、購入業者から請求書をもらいました。その事務机の代金を、令和9年4月20日に支払いました。この場合は令和8年度か令和9年度のどちらの年度で事務机を購入したことになるのでしょうか。現金主義で考えると、現金を支払った4月20日の年度である令和9年度に購入したとも考えられます。しかし、予算措置されているのは令和8年度のため、この年度でしか購入できません。そこで考えられたのが、「出納整理期間」です。この期間、つまり翌年度の4月1日から5月31日までに支払った分を、前年度の3月31日に支払ったことに整理するための制度です。
また、出納整理期間の最後の日、すなわち5月31日を「出納閉鎖日」といいます。この日までに現金の未収及び未払いを整理するという重要な日になっています。ただし、3月31日までに債権債務が発生していることが前提です。
地方自治法には出納整理期間の条文はないのですが、これは、出納整理期間が会計年度独立の原則を運用する上での慣行であるといえます。なお、出納の閉鎖の規定は地方自治法に規定があります。この規定により、出納整理期間を読み取ることになります。
普通地方公共団体の出納は、翌年度の5月31日をもって閉鎖する。
このように出納整理期間は会計年度独立の原則に基づき、各会計年度の歳入と歳出を明確にする会計制度の中で、予算と決算を対応させる手段ツールとして機能しています。
ただし、この期間中は前年度と現年度の会計処理が並行して行われるため、不適切な会計処理のリスクがあることも事実です。
ではどのようなリスクがあるのでしょうか?
① 会計処理の誤謬や不正
出納整理期間は、会計年度末(3月31日)に確定した債権・債務の現金整理期間ですが、この期間中に前年度と現年度の会計処理が並行して行われます。そのため、会計処理の誤りや不正が生じるリスクが高くなります。
② 資金移動に関するリスク
資金繰りの不適切処理です。例えば出納整理期間を利用して、一般会計から特別会計への不適切な資金貸付が行われることがあります。これにより、短期的な資金不足を一時的に解消できますが、赤字を隠蔽することにつながります。
また、財政状況の見えにくさにつながります。不適切な資金移動を繰り返すと、自治体の真の財政状況が外部から把握しにくくなります。夕張市の財政破綻も、出納整理期間の仕組みを利用した赤字隠しが一因とされています。
会計検査院からも不適切な会計処理として指摘される場合もあると思います。
①年度を跨ぐ支払いの誤謬
特に年度末に集中する支払いにおいて、本来旧年度予算で支払うべきものを新年度予算で支払ったり、その逆を行ったりする事例。
②納入期限と検収日の不一致
物品購入契約などで、納入期限を3月末に設定しながら、検収日が翌年度になることで会計年度所属区分が不適切になる事例。
不適切な会計処理に関しては、職員の意識改革が重要であることは疑いの余地はないと思います。そしてさらに、そのような不正が起こりにくい複式簿記の導入や出納整理期間の見直しなどの環境整備も、将来的には必要でないかと感じます。
システムディ顧問 宮澤 正泰(元習志野市会計管理者)